ジキルとハイドな彼
タイミングよくコウが表から戻ってくる。

「あら、お邪魔かしら。行くわね」

ウィンクをしてマスターは奥に下がって行った。

「何か聞けた?」

こっくり頷き鞄のレコーダーをオフにする。

ふとマスターに視線を向けると、ニヤニヤしながらこちらをチラチラ見ている。

私は腕を組みコウを引き寄せると耳元に顔を近づけ周囲に聞こえないよう耳元でマスターから聞いた説明の荒ましを話す。

コウは顎に手をあて思案しながら携帯をいじっていた。

マスターは名残惜しそうにしていたけど―――帰って欲しくないのは私じゃなくてコウなんだけど―――別れを告げ、店を後にする。

早速コウは電話でやりとりを始める。

JackRoseでは殆んど話しがメインだったので食事に手を付けられなかった。

腹の虫がぐう、と鳴く。

とりあえず、2人共お腹が空いているので、そこから少し離れた某有名高級焼肉店に入った。

こちらはコウの行きつけのようで、何も言わずに個室へ通された。

「好きなの頼んでいいよ。薫は今日大活躍だったから」

メニューを見ると、やはりお高めの値段設定だった。

こんなチャンスは滅多にないと全て「上」が付く肉をオーダーした。

運ばれてきたお肉をコウは貴重面に焼き網に並べていく。全て真っすぐで平行だ。

ここでも几帳面な性格が全面に出ていてちょっと引く。

それを眺めながら、私は先にきたチョレギサラダを取り分け、ウーロンハイを片手に摘まむ。

「しかし、思ったより聡は厄介な事に巻き込まれているみたいだね」

厄介なこと?私は眉を顰めて聞き返す。
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