ジキルとハイドな彼
過保護な彼
月曜日出勤すると、早速下関先輩が向かいのテーブルから書類の山を縫って、デカイ顔を突き出す。

「薫っち~、先週はゴメンね」

薫っち…何だ、それ。

週末の騒動の後だと、下関先輩の尻拭いなど、大したことがないように思える。

「とりあえず、再発送の手配まで完了しました。後は、トラブルの経過を報告書にまとめておきましたので、内容確認しといてください。下関さんと課長のOKが出れば、関係部に回付します」

「再発防止策は?」

お前がきちんと仕事することだな。

などとは勿論言えるハズもない。

「T印刷で現在検討中です。本日15:00に営業の池田さんが、上の人を連れてお詫びと説明に来ます」

あっちゃ~!っと言って下関先輩はわざとらしく額を抑える。

「私、その時間は広報とHP改定のミーティングはいっちゃってるわあ」と、言いつつ、ニヤニヤニヤしている。

あくまで今回のトラブルは私に押し付ける気のようだ。

しかし、そうは問屋が下ろさない。
「広報宣伝部の担当は関口さんですよね。明日にリスケしときました。メールCCに入ってるので確認しておいてください」

「何勝手に調整してんのよ」

厄介事から逃れられない苛立ちから、下関先輩は鼻息荒く食ってかかって来る。

いつもならムッツリ黙り込む所だが修羅場をくぐり抜けた今日の私はちょと違う。

「HP改定の案件って、至急案件でしたっけ?来期の計画だから、明日になった所で何も問題はないかと思いますが」

コウをイメージして有無を言わせない微笑みを浮かべる。
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