ジキルとハイドな彼
「これからどうなっちゃうの?」心配そうに珠希が尋ねる。

「わからない。恐らく何度か呼び出しがかかるから警察には行くことになるかもしれないわね」

厄介よね、とぼやいて、日本酒をちびりと口に含む。

「でも、刑事さん男前なんでしょ?それを楽しみにすればいいじゃない」

慰めるように友里絵は私の肩に手を置く。

「お堅い職業の割に、結構遊んでそう。私の順番なんて回って来ないかも」

一同がっくり項垂れる。

「最近、いい人と出会っても、もんの凄い遊び人か、妻帯者のパターンが多いのよね」

友里絵はお行儀悪く頬杖をつきながら、お鍋をつつく。

「ええ!やっぱりそうなんだ?!」

珍しく珠希がこの手の話題に食いついてきた。

「なに?あんた何かあったの?」友里絵の目が好奇心でキラリと光る。

「うん、ちょっと」図星を言い当てられたせいか、珠希の頬が赤く染まる。

「何よー、もったぶって。薫なんて知らないうちに犯罪の片棒を担がされそうになってんのよ?それ以上悲惨な話しなんて、早々ないんじゃない?」

ちょっと失礼じゃない!と私はクレームを入れる。

「毎日お店に来る常連さんの話しをしたの覚えてる?」

「あー、聡と同様、インチキ臭いって言ってた男?」

インチキどころか、犯罪者だったので、そこについては反論の余地がなく黙っておく。

友里恵の問いに珠希はこくりと頷いた。

「やだーご飯でも誘われた?」冷やしながら私はもつ鍋をつまむ。
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