ジキルとハイドな彼
「その人を先日部屋に連れ込んだの」

珠希の発言にモツを吹き出しそうになった。

「どうゆう事?」友里絵も目を白黒させている。

「店の帰りしなたまたま一緒になって家まで車で送ってもらったのよ。その途中、彼が職場の先輩に呼び出されたから無理矢理ついてって一緒に飲んだんだ」

「無理矢理って…どうしてそこまでして着いていったのかしら?」飽きれた口調で友里絵が言う。

「彼の事をもっとよく知りたかったんだもの」珠希は頬に手をあてて恥ずかしそうに言う。

「しかも職場の先輩って.…その人仕事してたんだ」意外だわ、と私は呟く。

「彼、公務員なんだって」

怪しい男がよりによって手堅い公務員とは…

「聡の時とどっちが胡散臭い?」私が尋ねると、「うーん、どっこいどっこいね」と言って友里絵は日本酒を一口煽る。

「失礼ね」珠希は頬を膨らませた。

「で、先輩と飲んだ後に酔った勢いで自宅に連れ込んじゃったんだ?」私が話しを進める。

お堅い珠希がめっずらしー、と言って友里絵が茶化した。

「うん、私ね、あんな男の人に欲情したのって始めて。彼はそんな気なかったみたいだけど、自分から家に連れ込んだの」

珠希の過激な発言に私も友里絵も言葉をなくし口をポカンと開ける。

「身体の相性も抜群だったわあ」珠希は思い出したのか妖艶な笑みを浮かべる。

「それって相性がいいから溺れてるだけ、とかじゃなくて?」友里絵が正気を取り戻して尋ねる。
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