ジキルとハイドな彼
「散々恐ろしい目にあった上に、OCNだかOBMだか何だか知らない恐ろしい不良達につけ狙われてるって脅されて、平気な人っている?」

「OAEね」コウがすかさず突っ込む。

「別に脅したつもりはない。薫が無理矢理聞き出すからだろ?」

コウはムッとした様子で言い返す。

その通りなので何も言い返せず、俯きながらお皿に美しく飾りつけられたデザートのガトーショコラをフォークで突つく。

「だから薫の事は守るって言っただろ」

思いがけない言葉にハッとして顔を上げる。

視線がぶつかると、コウはバツが悪そうに目を逸らし「その…警察が」と、小声で付け足す。

「そうね。コウにも匿ってもらってるし、小鳥遊くんもお迎えに来てくれてるもんね」

私は若干引き攣りつつも笑って見せる。

「いや、あの、そうじゃなくて…」

「そういえば尾花さんも今日連絡くれたのよ」

え…と言ってコウは固まる。

私は気を取り直して、付け合わせのピスタチオのアイスクリームをスプーンですくって一口食べる。

「尾花さんはどうして薫に連絡してきたんだろう」

私はアイスクリームを食べながら、さあ?と首を傾げる。

「心配して掛けてくれたのかな。親切な人ね」

コウは再びムッツリ黙り込むとコーヒーに飲む。

「皆さんが護ってくださるんだから、あんまり不安がってても仕方ないよね」

私はガトーショコラを頬張った。
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