ジキルとハイドな彼
「終焉、破局、破壊を意味するカードです」

コウは淡々とカードの意味を告げる。

「そ、それって…どうゆうことなのかな」

私は強張った笑みを浮かべる。

未来が死神って。おまけに稲妻が塔に落ちるカードまであるんだから、素人目に見ても救いようがないのはわかる。

「まあ、一言で表すなら、前途多難…といったところでしょうか」

コウの表情も引き攣っている。

きっとその表現もオブラートに5、6枚は包んだ上で言っているのだろう。

「ただの占いですから」取り繕うようににっこり微笑む。

「よく当たるって言ってなかったっけ?」恨みがましいじっとりとした視線を送る。

コウは手を口元に添えて考え込んでいる様子だ。

フォローの言葉でも探しているのだろうか。

視線に気づいたのか顔をあげてこちらを見据える。

「薫、占いの結果というものは、あなたのこれからとる行動によってはまた違う未来に変化することもあり得るのです。一回の結果で全てを判断してはいけませんよ」

でも…と呟きコウは眉根を寄せる。

「彼の様子を粒さに観察し、何か変化があれば、またいらっしゃい。どのようにあなたが行動すればよい方向に向かうのか一緒に考えましょう」

コウは柔らかく微笑む。

そうだ、と言ってポケットから小さな焦げ茶色のケースを取り出し、中に入っている名刺を一枚抜き取った。
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