ジキルとハイドな彼
六本木通りを下り、外苑東通りに出ると一本脇道に入る。

「ここだ!」

1.2階は店舗やオフィスが入った綺麗なデザイナーズマンションのエントランスに入っていく。

聡は慣れた手つきでオートロックを解除した。

「ここは?」

「知り合いのビル。こっちだ」

エレベーターに乗り込み最上階である13階のボタンを押した。

「薫、携帯は?」

「エレベーターだから圏外」

「じゃあ、外に出たら電話しよう」

「へ?外?」

タイミング良くエレベーターはチンとベルが鳴り最上階に到着した。

ドアが開くとそこは住居スペースなっているようだ。

聡は廊下にズラリと並んだ扉の前を素通りして、突き当りの非常階段マークが付いているドアを開けた。

「こっちだ」

非常階段を登ってくと、一番上は踊り場になっている。

屋上へと繋がる鉄の扉を聡が開くとギギギっと軋んだ音がした。

「屋上に出たら警察を呼ぼう」

私は頷き聡の後を追って外に出た。

吹きつけてくる強い風に髪が靡く。

さっきの展望室ほどではないが屋上からの眺めもなかなかよく、東京タワーと街並みがよく見渡せる。

夜景はきっと綺麗に違いない。

「さとし…」

髪を掻きあげて後ろを振り返った瞬間、私は固まった。
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