ジキルとハイドな彼
「俺が日本に借りている貸し金庫の鍵だ。中には有価証券などが入っている。タイに行ってる間、薫が預かっていてくれないか?」

「そんな大事な物を私が預かっていて大丈夫かな」

私は心配になり眉根を寄せて尋ねると聡はクスクス笑って頷いた。

「ゆくゆくは二人の財産になるんだから」

「聡…」感動して思わず目に涙が浮かぶ。

「仕事が落ち着いたら迎えに行くから、待っててくれるね」

机に置いた私の手にそっと聡が手を重ねる。

指が太くてゴツゴツした男っぽい手。

この手をとって病める時も健やかな時も共に歩いて行くんだ。

私は大きく何度も頷いた。
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