ジキルとハイドな彼
「graniteのご飯とかドリンクが美味しいから来てるんでしょ?私も好きだよー」

「薫…いい子ね。ありがとう」

珠希がほっそりした手でギュッと私の手を握る。

「それにしたって、朝夕、その上、毎日決まった時間には普通来られないじゃない?」

至極当然の友里恵の突っ込みに、うーん、と頷く。

「で、いい男なの?」ニヤっとして友里恵は続け様に聞く。

「え…別にふつー」

直球の問いに珠希は一瞬目を泳がせたが『…』の間を友里恵は見逃さない。

「結構タイプなんだー!だからそんな気になるんでしょー?」

「確かに顔立ちはカワイイんだけど、妙に軽薄なのよ」

惜しいのよね…と呟き珠希は「あれはナイわ」と言いながら首を横に振る。

「でも珠希に全く興味がないってとこも案外気になるツボなんじゃないの?」

私の発言に珠希は目を細めてこちらに視線を向ける。

「それって私が自意識過剰な女みたいじゃない」

ムキになって言い返すとこを見ると図星のようだ。

「珠希がわかる、って言ったのは、インチキ臭い男にはまる薫の心境かあ」

うまく一言でまとめると、ふう、と溜息を着いて友里恵は赤ワインをぐびっと飲む。

「違うもん!」

私と珠希は声を揃えて否定する。

…それぞれ否定の対象は違うが。
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