ジキルとハイドな彼
さて、と言ってコウは小さく咳払いをする。

「薫、今日は落ち込んでたみたいだけど何かあった?」

「実は彼にプロポーズされたの」

「え?」コウと小鳥遊は目を見開いて、驚愕の表情を浮かべる

「何なのよ、その反応」

今日会ったばかりの小鳥遊にまで、信じられない、といったリアクションをとられて少々ムッとする。

「いや、話が急展開で驚いただけだよ。小鳥遊はオーバーな所があるから」コウはにっこり微笑んだ。

「それで、承諾したんですか?」小鳥遊ドライイチジクを齧りながら尋ねる。

「うん、でも直ぐに結婚って訳でもないんだ。彼、近々タイに行っちゃうから」

「タイ?!」コウと小鳥遊は口を揃えて聞きかえす。

「うん、そう。THAI LAND。現地で何やら事業を起こすから、暫く向こうに行くみたい。それで落ち着いたら呼ぶから、一緒に住まないかって言われたの」

私は恥ずかしくなりテヘ、と笑った。

「なんだ。口約束じゃないですか」小鳥遊の失礼な突っ込みに私は唇を尖らせる。

「ダイヤモンド貰ったもん」胸元を突き出し光輝く愛の結晶を見せた。

「それ本当にダイヤなんですかね。クリスタルとかだったり」

「何であんたまでそんな事言うの?!フェイクな訳ないじゃない!」

思わずムキになって言い返す。

「だってプロポーズなんて言うから、もっとちゃんとした結婚への手筈が整ってるって思うじゃないですか。普通」

小鳥遊め…痛いところを突いてきやがる…。

「今回の場合は口約束の上に、その後彼は海外行くんでしょ?それでは正式にプロポーズされた、と言えるかどうか。俺も高校生のころとか、よく女の子に結婚しようって言ってましたからねー」

小鳥遊はハハっと声を上げおかしそうに笑う。

「あんたみたいな若造が知った口聞くんじゃないわよ!」

高校生と同レベルに扱われた屈辱で思わず声を荒げる。
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