ジキルとハイドな彼
「大丈夫?」といってティッシュを差し出すと、それを受け取りながら小鳥遊は咳き込む。

「そのインチキ臭い男ってそのお友達に気があるんじゃない?」黙り込んでいたコウが茶々をいれる。

「それはないって言ってたわ。何が目的かわからないから、かえって気味が悪いって」

そうかもしれないね、と言ってコウはクスクス笑う

「なんか私の話しばっかりしちゃってごめんなさい」

「今日はその為に集まったんだから」

コウは柔らかく微笑み私のグラスにさりげなくワインを注いでくれた。

「二人はないの?その恋愛の悩みとか」

「薫さん、俺たちがその手のことで悩むように見える?」

小鳥遊に鼻で笑われたが、返す言葉は…ない。

コウも謙遜することなく口元に微笑みを称えている

私はだまって鼻の頭にシワを寄せた。

「薫さんもさー美人なんだから、そんな悶々と考えてないで、結婚出来たらラッキー、ダメならダメで次行きゃいいじゃん。男は星の数でしょ」

さらに小鳥遊がグラスにワインを注ぎ足す。

なみなみと注がれワインをグッと飲み干し一息つく。

「星の数だったとしても、私は星の数ほど立ち直る気力がないもん。あなた達みたいな完璧な人には挫折してから立ち直るのにどれ程心が摩耗するかわからないでしょう」

「もっとさー気楽にいこうよ、薫さん。そんな卑屈じゃイイ運気も逃げちゃうよ?」

クリッとした小鳥遊の茶色い目はじっと私の顔を見据える。
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