ジキルとハイドな彼
「俺今葛城さんが微笑みながら子猫の背中を掴んで、窓から川に放り投げる光景が思い浮かんじゃいました」

きっとその哀れな子猫が私に違いない。

「薫には知っている全てを吐いてもらわないと。その為の手段は選ばない」

「高飛びさせる訳にはいきませんね」

「タイとはふざけた事を抜かしやがって。徹底的に追い詰めてやるよ」

コウは吐き捨てるように言う。

まるでジキル博士とハイド氏のよう。

背筋にゾクリと寒いものが走る。

コウ達の本当の目的は聡だ。

起き上がって問い詰めようとしても身体が金縛りにでもあっているかのように動かない。

私のせいで聡が何か得体のしれない厄介な事に巻き込まれてしまう。

そんな駄目…絶対に駄目…


「やめて!お願いだからやめて!」

自分の大声で目が覚める。

気がつくとそこにはコウの姿も小鳥遊の姿も見当たらない。

私はライトグレーのシーツがかかったダブルベットに横になっていた。

眩しい日差しが差し込んでおり、窓辺に置かれた観葉植物の緑が目に染みる。

ここ…どこ?

上半身を起こして辺りを見回す。
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