ジキルとハイドな彼
「合成麻薬とは化学薬品から合成してできる麻薬のことです。脱法ハーブの一種でマリファナと同じような恍惚感を与える効果があります。それらを使用し続ければ、精神分裂病、心臓発作、発熱、脱水症状などの副作用を引き起こします」

コウは淡々とした口調で説明を続ける。

「最近ホームレスのリンチ殺人などショッキングな事件が続いているかと思いますが、我々はそれらの犯人はあなたが所持していた『K-2』という合成麻薬を使用した副作用から発生した犯行であると考えています」

あまりに衝撃的な話を淡々と語るので吐き気が込みあげてくる。

「アタッシュケースの中身がどれ程危険な代物かご理解いただけましか?」

それを数分前まで自分の手の中にあったなんて考えただけで身震いする。

知っていて聡は私に託したのだろうか。だとしたらとんでもない話だ。

コウは氷りつくほど冷ややかな瞳で私を見据える。

きっとこれがコウ本来の姿なのかもしれない。

酔っ払った時、夢に出てきたハイド氏のコウを思い出す。

あれは夢なんかじゃなかったと私は確信した。

姉のようだ、と慕った優しいコウは私から情報を引き出すためにあくまで装っていたのだろう。

色々な事実が錯綜していて頭がおかしくなりそう。

「では先ほど伺った話しの確認ですが、あなたは恋人から届けるように言わてあのアタッシュケースを持っていた」

はい、と短い返事をして私は頷く。
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