さよならだね。




あたしはされるがまま、愁くんのキスについていくのに必死だった。


愁くんの胸のあたりの服をきゅっと掴む。





「ほら。こういうの。」


「えっ?」



愁くんは唇を離し、あたしが愁くんの服を掴んでいるところに視線を落とす。





「いちいち可愛いんだよ、ゆらは。」


「そんなことないよ。」


急に可愛いなんて言われたから、あたしはまたさらに照れてしまう。




「そうやって照れてすぐ赤くなるとこも、俺のキスに一生懸命答えようとするとこも、俺が抱きしめたら細い腕でそっと抱きしめ返してくるとこも、小犬みたいな目で見つめてくるとこも、無邪気にくしゃって笑うとこも、愁くんっていつも可愛い声で呼んでくるとこも、ゆらの全部が可愛くて、俺だってドキドキさせられっぱなしなんだよ。」


「愁くん、、。」


「でも、俺の方が7つも年上だし、男なんだから、しっかりしなきゃって思って、いつも我慢して平気なフリしてる。」



愁くんはそっとあたしを抱きしめた。


ワレモノでも扱うかのように、そっと。





「俺は、ゆらが思ってるよりもずっと、ゆらのことが好きだよ。」


「愁くん、、」


あたしはありったけの力で、愁くんを抱きしめ返す。



「あたしだって、愁くんが思ってる何百倍も、愁くんのこと大好きだもん。」




誰かがこの状況を見たら、こいつらバカップルだなって笑っちゃうんだろうな、、。


でも、あたしは、心の底からすごく幸せだと思ったんだ。




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