さよならだね。



「愁くん?どうかした?」


パチパチとまばたきするだけで、何もしゃべらない愁くん。

あたしが顔をじっと見ていたら、いきなり動いた愁くんにキスされた。




「浴衣、すごい似合ってる。」


そう褒めてくれる愁くんは、照れ臭そうにはにかんだ。


「ありがと。」


なんだかあたしまで照れちゃう。





愁くんの運転で、あたしたちは夏祭りの会場の近くまで行き、車を停めて歩いて会場に向かう。


歩き出した途端、愁くんの手があたしの手をそっと握り、指をからめとる。



どんどん出店に近づくにつれて、おいしそうな匂いが鼻をかすめる。



「何食べる?」


愁くんがあたしの方を向いて話す。


「えっとね〜、カキ氷にりんご飴、あとわたがし!」


「ははっ。全部甘いものじゃん。飯になんの?」


「あっ、そっか。」



まるで子どもみたいにはしゃいでしまった自分が、ちょっと恥ずかしかった。



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