さよならだね。



「でも、これだけは信じてほしい。」


愁くんは、あたしの目を真っ直ぐに見て言う。




「こんな歳で恥ずかしいけど、俺、初恋なんだ。ゆらが。」


「えっ?初恋って、、」


まさかの言葉に、あたしは目を丸くする。



「いま話した通り、俺はいままで特に拒むことなく、誰かと付き合ってきた。でもそこに俺の気持ちなんてなかった。誰かを好きになったのは、ゆらが初めてなんだ。だから、ゆらは俺にとっての初恋。ゆらは、俺が、初めて好きになった人だよ。」


「愁くん、、」


「難しいことだってわかってる。でも、やっぱり信じてほしい。俺が、ゆらを好きだってこと。ゆらは、俺にとって一番大切な存在なんだってこと。信じてほしい。」




あたしにはわかるよ。愁くん。


恋愛経験なんて無いに等しいあたしだけど、昔から人を見る目だけはあるの。

これだけは自信がある。


だから、いまあたしを見つめる愁くんの真っ直ぐな目に、嘘偽りなんて何もない、そう思う。




「信じるよ。あたしは、愁くんのこと信じる。」


「ゆら、、ありがとう。」


愁くんはホッとしたように、肩の力を抜いた。



そしてもう一度、そっと優しくあたしを抱きしめる。


あたしの心を包み込むように。



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