さよならだね。
「ゆらを好きになった頃、ずっと悩んでた。俺はゆらにふさわしいのか、ゆらを好きになってもいいのかって。」
「どうして?」
「ゆらは真っ白だったから。純粋で真っ直ぐな目をしてて、俺みたいな奴じゃ、ゆらを汚しちゃうんじゃないかって思った。」
あたしは愁くんの背中にまわす腕に力を込める。
「そんなことない。絶対。」
「うん。ゆらがそう言ってくれるから、ゆらが俺のこと好きって言ってくれたから、気づいたらそんな悩み、どっかに消えてたよ。」
愁くんが耳元で笑うから、吐息がかかってくすぐったい。
「ゆらが俺のことを好きでいてくれるなら、俺はそれ以上にゆらを想う。どんなことをしたってゆらを守る。俺にはそれしかできないって思ったんだ。」
愁くんの言葉が、あたしの胸に染み渡っていく。
好きな人にこんなことを言ってもらえて、あたしはどれだけ幸せ者なのだろう。
しかも、愁くんみたいなこんな素敵な人に。
あたしにはもったいないくらいの幸せ。
世の中の女の子は、みんなこんな幸せを味わっていたんだろうか。
こんなに温かい気持ちになれるんだってことを、いままでずっと知らなかったなんて、あたしは何をしてたんだろう。