さよならだね。
「愁くん!あと30分だよ!」
「えっ?ああ、大丈夫。間に合うから。」
今年もあと30分で終わろうとしている。
なんだか、あっという間のようで、でも中身の濃い1年だった。
ゆらがいてくれたからだろうな。
ゆらとの思い出がいっぱいで、忙しく過ぎる毎日にも、ちゃんと安らぎがあって、だからこんなに充実した1年になったんだ。
今年も残すところ10分ちょっと、ってとこでゆらの家から近い、大きな神社についた。
「人多いね〜。わぁ〜!出店もいっぱいだ〜!」
いまにも走り出して迷子になりそうな、危なっかしいゆらの手をしっかり握る。
「出店は後で。カウントダウンして、初詣してからな。」
「はーい!」
俺はゆらの手を引き、カウントダウンに集まった人で溢れかえる、境内の方に入る。
「絶対、手離すなよ。」
「うん!」
人混みに囲まれ、ゆらがぎゅうぎゅう押されてるのがわかった。
ゆらは背が小さいから、俺より大変なんだよな。
周りからの圧力に必死に耐えながら、ゆらはつないでた手を離し、俺の左腕にしがみついてきた。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ〜!愁くんにつかまってるから。」
俺を見上げるゆらがかわいい。
少し困ったように笑いながら、俺の腕にさらにきつくしがみつく。