さよならだね。



一晩中、病院のロビーで泣き続けた。



明け方ごろに、愁くんのご両親が病院に来た。


原口さんが、ご両親に事故と愁くんの容体の説明をしていた。



声を出して涙するお母さん、そんなお母さんを支え、原口さんにお礼を言うお父さん。




愁くんのご両親は、あたしたちにも軽く会釈して、愁くんの元へと行かれた。



その背中を眺めていた。


こんな形でお会いしたくなかった。



いつか愁くんが言ってた。


愁くんは一人息子だから、何でも好きなようにやらせてくれて、親には感謝してるって。





愁くん。


お母さんもお父さんも心配してるよ。


早く目を開けて、ご両親を安心させてあげて。





「じゃあ俺たちは帰ろうか。愁にはまだ会えないし、とりあえず俺たちも休もう。何かあれば、愁のご両親が連絡してくれるって言ってたから。」



優華に支えられながら、原口さんの車に乗る。


原口さんが、家まで送ってくれた。





本当は病院を離れたくなかった。


愁くんのそばを離れたくなかった。


心配で、不安で、、


会えなくても、少しでも近くにあるいたかった。



でも、いまあたしに出来ることは何もない。


ただ、愁くんを信じて待つだけ。



それしかあたしには出来ないから。



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