さよならだね。
その日の夜。
仕事終わりの原口さんが迎えに来てくれて、優華も一緒に、3人で愁くんの病院へ向かった。
集中治療室を出て、一般病棟の個室。
ドアの前で深呼吸をする。
久しぶりに会うからか、なんだか少し緊張した。
原口さんが病室のドアをノックすると、はーいと愁くんのお母さんらしき人の声がした。
「失礼します。」
先頭きって入る原口さんに続き、優華と並んで病室に入った。
ベッドの背を起こして、座っている愁くん。
愁くんのご両親は、ベッドの横のイスに腰掛けていた。
1週間ぶりに見る愁くんは、頭や腕に包帯を巻いていて、顔にも傷があり痛々しい。
「愁!よかった〜!心配したんだぞ!」
原口さんが愁くんの肩に手を乗せる。
「ああ、悪かった。」
「体は大丈夫なのか?」
「まだあちこち少し痛むけど、特に問題はないらしいから。」
そう言って、微笑んで話す愁くん。
愁くんだ。
愁くんが笑ってる。
あたしは嬉しくて泣きそうになってた。
次の言葉で、驚きのあまり、涙も引っ込んじゃったけどね。
「で?その子たちは?」
愁くんが、あたしと優華を見ながら言った。