さよならだね。



「この子が、ゆらちゃん?もしかして、海斗の彼女なのか?」


「愁、、違うだろ、、」


「あ、違うのか?ごめんね?ゆらちゃん。」



あたしの目を見て、申し訳なさそうに謝る愁くん。




なに?その他人行儀な態度、、。


愁くん?愁くん、、



あたしは驚きと悲しさと、、


一言も話すことができない。





「おばさん、担当の先生を呼んでください。こいつ、、記憶が、、」



原口さんがそう言うと、愁くんのお母さんが慌ててナースコールをする。


すぐに担当の先生と看護師さんが、愁くんの病室へと駆け込んできた。




原口さんが状況を説明すると、先生が愁くんにいろいろな質問をしていく。



すんなり答えているかと思ったら、全然わからない、覚えていないと、答えられない質問もあった。



診察の結果、、、





「立花さんは、大学からの記憶が全てなくなっているようです。事故の後遺症によるものだと考えられます。日常生活に影響はありませんが、不便なことも出てくるかと。」


「記憶は、、記憶は戻るんですか?」



原口さんの震える声。


事故のときと同じ。




「いまの段階では、はっきりとは言えません。実際に、すぐに記憶が戻られる方もいれば、何年もかかる方もいますし、一生そのまま記憶が戻らない、という方もいらっしゃいます。」




そんな、、


記憶が戻るかさえわからないの?



もし、戻らなかったら、、


あたしは、、



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