さよならだね。



「愁くんの彼女さん?」



あたしと同じように、愁くんと呼ぶ人、いま愁くんと一緒にいた車イスの人。


体がすごく細くて、でも大人っぽく落ち着いていて、きれいな女の人だった。




「そんなんじゃないよ。友達っていうか。妹みたいな奴っていうか。」



ズキンっ、、


愁くんの言葉に、心が痛んだ。



妹か、、


愁くんは、そんな風に思ってるんだね。





「そうなの?あ、初めまして。あたしは、塩崎香織です。最近、愁くんとリハビリが一緒で、仲良くしてもらってるの。」



怖い、、なぜかあたしはそう思った。



「初めまして。葉月ゆらです。」


「よろしくね、ゆらちゃん。」


「あ、はい。こちらこそ。」




そう言って、差し出された手を握り、軽い握手をした。



やっぱり、、この人怖い、、。




全然優しそうな人だし、悪い人には思えない。



なのに、あたしは香織さんに、なぜかよく分からない恐怖心を感じた。





「じゃあ、あたしはもう戻るね。愁くん、また明日。ゆらちゃんも、またね。」


「はい。」


「気をつけてな。まあすぐそこだけど。」



そんな冗談を言って、微笑む愁くんを見て、あたしの心がまた痛む。



だって、、


愁くんが、あの優しい温かい笑顔を、香織さんに向けていたから。



ヤキモチ?嫉妬?


でも、そんな言葉じゃ片付かないような、ザワザワとする心。



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