さよならだね。
「会社の人って言ったけど、本当は香織といた。香織と会ってた。」
「うん、声で香織さんだってわかった。」
あたしがそう言うと、愁くんはため息をついた。
「本当ごめん、俺バカだった。最初っから、香織に会うこと、ゆらに話しとけばよかった。さっきも、嘘つかなきゃよかった。ゆらが電話切ってから、すげー後悔した。」
「なんで言ってくれなかったの?香織さんと会うこと。なんで嘘ついたの?」
あたしが一番聞きたかったこと。
香織さんに会うななんて言わない。
ただ、前もって話してほしかったし、せめて嘘はつかないでほしかった。
二人で会うことを隠されると、疑いたくなくても、疑ってしまうから。
「何度も言おうと思った。結構前から約束してたから、言うチャンスは何度もあった。でも、言えなかった。ゆらに、行かないでって、言われたくなかった。香織のこと、変に意識してほしくなかったんだ。俺は、香織のことは、大事な友達だって思ってるから。」
「束縛されたくなかったってこと?あたし、そんなこと、言わないよ。」
ショックだった。
あたし、そんな風に思われてたのかなって。
やっぱり、束縛するような、重い女だって思われてたのかなって。
子どもだって思われてたのかなって。
「そうだよな。ゆらがそんなこと言うはずないんよな。ゆらは、本当は嫌だとしても、そんな自分の気持ち押し込めて、笑って送り出してくれるんだよな。そういう優しい子だよな。」
愁くんは、悔しそうに唇を噛み締めた。
「俺、本当バカだ。最低だ、ごめんな。」
あたしから目をそらし、遠くを見つめるような目をする愁くん。
愁くん、、どこを見てるの?
愁くんの目に、何が映ってるの?
「俺、ゆらのこと信じてるはずなのに、ゆらが一番大事なはずなのに、何やってんだろうな。」
愁くんの目が、すごく切なかった。