さよならだね。



家まで送ってもらってる間も、来たときと同じように、お互い何も話さなかった。




あたしは、愁くんをいっぱい充電してた。



運転してるときの横顔。


信号やライトの光で、顔の見え方が変わる。


女の子が羨ましがるような、くっきり二重。


長いまつげと、スッと通る鼻筋。


ハンドルを握る、きれいだけど男らしい手。


たまにふわっと香る、愁くんの匂い。




全部、、大好き。




最後になるかもしれない、


少なくともしばらくは会えない、



だからいまは、大好きな愁くんを、たくさん感じていたいんだ。






あたしの家の前で止まった車。




「これ、ありがと。」


あたしは、愁くんがかけてくれていたジャケットを返した。



手渡すときに、少しだけ指先が触れて、あたしは涙が出そうになって、慌てて車を降りる。




「じゃあね。体には気をつけてね。」


「ああ。ゆらも、就活頑張れよ。」



車を降りると、あたしは振り向かずに玄関に向かう。




もう、こんなときまで見守ってくれなくていいのに、、



愁くんの車が走り去る音がしない。



きっと、いつもみたいに、あたしが家の中に入るまで見送ってくれるんだ。



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