さよならだね。



そんな日々の中、あの約束が近づいていた。



香織とずっと前から決めていた、お互いの退院祝いをしようと言っていた日。




俺は、ゆらに言おうかどうしようか迷っていた。



香織のことは、本当に友達としか思っていなかった。


だから、二人で飯に行くことに、なんの抵抗もなかったんだ。



でも、ゆらからしたら、あんまり良い気はしないよな。


自分の彼氏が、他の女と二人で飯食いに行くなんて。


逆の立場だったら、俺も絶対嫉妬する。





だから、ゆらには言えなかった。



ゆらが嫉妬して、嫌な思いをするくらいなら、黙っておこうと思った。


それに、香織のことを、嫉妬の対象として見てほしくなかったから。




別に、一緒に飯を食うだけ。


俺が黙ってれば済む話。



そう思ったんだ。





でも、今となっては、言ってればよかったと思う。



本当に何にもないんだから、隠す必要なんてないはずなんだ。



それに、ゆらは嫉妬しても、嫌だと思っても、それを俺に押し付けるようなことはしない。


我慢して、自分の中に押し込める。


そういう子なんだから。



ゆらはきっと、俺が隠してた方が辛いんだ。



隠しごとをされる方が、嫌だったんだ。




いまさら、遅いけどな。



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