さよならだね。
ゆらを家まで送る。
さよならに向かって車を走らせるって、こんなに辛いんだな。
なんでこんなときに限って、信号は全部青なんだよ。
なんでこんなときに限って、道は混んでない?
もっと、時間かかれよ。
まだ、着きたくない。
そんな俺の気持ちなんて、ゆらには届かない。
家の前に着くと、少し話して、ゆらはすぐに車を降りてった。
玄関に向かうゆらの背中を、じっと見つめる。
いつもは、玄関を開けて、中に入る前に一度振り向いて、俺の大好きな笑顔で手を振ってくれるゆら。
でも、今日は振り向かない。
振り向かないまま、玄関のドアが閉まった。
振り向かなくて良かった。
俺、いま情けないくらい、涙で顔がぐちゃぐちゃだから。
でも、俺はどこかで、振り向いてくれることを期待していたのかも。
だから、最後まで車を出せずにいたんだ。
ゆら、会いたいよ。
いますぐゆらを抱きしめたい。
たった今、別れたばっかなのにな。
俺が別れを切り出したのにな。
本当に自分が情けねーよ。
俺って、こんなに涙もろかったか?
こんなに女々しかったのか?
別れがこんなに辛いなんて、初めてだ。