さよならだね。



記憶失くした愁にさ、あたしのことは何も言わないで、なんて言うんだぜ?


自分が彼女だって知ったら、それを理由に愁くんを縛りつけてしまうからって。



ありえねーだろ?


普通、自分が彼女だったんだぞって、言っちゃうと思うんだよな。





俺が言ってやりたかったよ。



だってさ、そんなゆらちゃんに、他の女にやる花束買ってこいなんて言ったんだぜ?


愁のバカ野郎が。


しかも、かすみ草の花束を。



愁が電話で言ってたんだ、事故の前の日。


ゆらちゃんが見る夢の話。


だから、かすみ草の花束を、指輪と一緒に渡すんだって。



なのに、そんな大事なことも忘れて、そのかすみ草の花束を、他の女にやりやがったんだ。




殴ってやりたかった。



しっかりしろ!目覚ませ!って。


何やってんだよ!って。




でも、ゆらちゃんがさ、耐えてるから。


笑って愁に花束届けるから。


愁の幸せを願って頑張ってるから。



俺がそんなこと言えるはずもなかった。



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