さよならだね。



「俺さ、入院してたとき、毎日夢みてたんだ。」


「夢?」


「うん。いつも同じ女の子が出てきてた。その子が料理作ってくれてたり、その子と着物来て紅葉見に行ったり、その子がサンタの服着てプレゼントくれたり、でも、その子の顔が全然見えなかった。」




待って、、


愁くん、、それって、、


全部あたしたちの、、





「写真見つけてわかった。あれは全部、ゆらだったんだって。ゆらと俺の思い出だったんだって。毎日、ゆらが夢で会いに来てくれてたんだ。」


「愁くん、、じゃあ、記憶、、」


「ああ、完璧に全部を思い出したわけじゃない。でも、夢に出てきた部分だけは、思い出せてたんだ。」


「よかった。本当に、、」




涙が止まらないあたしを、愁くんが抱きしめてくれる。



そっと優しく、でも強くしっかりと、抱きしめてくれる。





「全部思い出すには、まだまだ時間がかかるかもしれない。でも、絶対思い出してみせるから。」


「うん。信じてるよ。」


「こんな幸せな思い出、忘れたままなんて、もったいないよな。」




愁くんが少しあたしを離し、あたしの目を見た。



さっきまでの悲しい目とは違い、しっかりとした目で、あたしの目をとらえて離さない。



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