さよならだね。
さよならだね。
「愁くん!!」
名前を呼ぶと、愁くんはベンチから立ち上がって、こっちを向いた。
そして、黙って腕を広げたんだ。
あたしは思いっきり走った。
愁くんの腕の中目がけて。
愁くんの胸に飛び込んだ。
「よかった、、愁くん。目が覚めて、、」
愁くんが本当に目を覚ましたことを、やっと実感できて、あたしはホッとしたら涙が出てきた。
「ごめんな、ゆら。心配かけちゃったな。」
「ううん。愁くんが無事なら、それでいい。」
あたしがぎゅっと抱きつく力を強めると、愁くんもぎゅっと腕に力を込めてくれる。
「でもどうして、あたしに連絡してくれなかったの?目が覚めたことも、退院したことも。優華も原口さんも、訳があるからって教えてくれなかったし。」
「あの二人には、ゆらにはまだ言うなって、俺が頼んだんだ。」
「どうして?何があるの?」
意識が戻ったことを、あたしには知らせない理由って、一体何なの?
「ゆら、ちょっと目閉じてて。」
「えっ?」
「早く。俺が開けていいって言うまで、絶対開けんなよ?」
あたしは何が何だかわからないけど、とりあえず愁くんに言われた通り、目をつぶった。