35本の赤い糸
そ、そりゃあその……と口の中でもごもご言う私に
「さぁて! 置いてかれちゃうよー、有里ー?」
「っ!?」
か、からかわれたっ!?
自分の自転車に向かって走る彩佳の背中を追いかけながらも叫ぶ。
「そ、そっちが言い出したんでしょー!?」
その、バカバカしくも微笑ましい様子を月光が淡く照らしだし、彼らの笑い声があたりを包み、空気を震わせる。
青春を謳歌している彼らは、うっすらと広がる霧の中に消えていく。
ほんの少し、喧騒のほとぼりを残してーー。