私だって泣きたいこともある
「そうですか
それならば、わざわざ滝田さんと揉め事を起こす理由は
なんですか?」
「さぁ…
そういう気分だったんです」
生徒会長はポケットからメモとペンを取り出し
サラサラと何かを書いた。
「昨日、君の母君を見かけました」
そう言って渡されたメモには
クリニックの名前と電話番号が書いてある。
「・・・」
「依存症専門の、信頼できる先生です」
!
生徒会長は、またメモに何かを書いた。
「これは僕の電話番号
ナンパではありませんよ
君のファンの1人には違いありませんが」
クスッと、笑った生徒会長は
「僕に出来ることがあれば、言ってください
どうせ卒業まで暇ですから」
そう言って私に電話番号が書いてあるメモを差し出した。
「―― ありがとうございます…」
生徒会長の後ろ姿を少しだけ見送って
私は、バラ園に向かった。
むせ返るようなバラの香りの中で
私は空を見上げて泣いた…。
私だって、泣きたいこともある。
どうしようもなく 泣き出したいこともある…
このまま薔薇の中に埋もれて
消えてしまえたら…
―― 明日…
クリニックにママを連れて行こう…