冷血ラブリズム~続編、5日更新~
「なにため息ついてんだよ、桜花」
遠くにいるのに、あたしの視線に気づいた弥月が近づいてくる。
「なんでもないよ。ちょっと考え事」
弥月がだれにでも優しくなって、笑っているところが見たくないなんて言えないよ。
弥月の変化とか、変わろうと思ってることを邪魔することなんてあたしにはできないの。
「桜花…、本当に大丈夫かよ?」
首を少し傾けてあたしの顔を見てくる弥月に、どきんと心臓が大きく鳴った。
弥月はずるい…。今まではそんな風にしてなかったのに…。
「桜花、いろいろ悩んでるみたいだから聞いてあげてよ。ね?哀川くん」
トンとあたしの腕を小突いて見せた佳代に、驚いた。
「あたし悩んでなんてっ…!」
「わかった。桜花、どこかに行くぞ」
ぱっとあたしの手を掴んだ弥月に、引かれてしまう。
「あっ!ちょっと佳代っ!?」
少しずつ遠くなっていく佳代に、口パクで一言だけあたしは言った。
「あ・り・が・と」
それをうまく理解してくれた佳代は、あたしににっこりと笑顔を向けてくれた。
「ちょっと弥月まって…!歩くの速いよっ」
「いや。桜花の悩みってやつを聞かなきゃ俺、気が済まないんだよ」
少しだけ口角をあげて笑う弥月に、心臓がうるさくなる。
ドキドキ言って苦しくなる。
なんで…知らないうちにこんなに笑っちゃってるのよー!
こんな弥月…知らないよっ。