10年後も、キミと。
「なんだよー、ケチ。

好きなんだから、見に行ったっていいだろ?」


芳樹くんは、さらっと好きとか、言うんだ。

電話だから?

それとも、雅人くんのことを意識してるから?


一瞬、黙ってしまった私。

電話の沈黙は、たとえ一瞬でも、長く感じさせてしまうのに。


芳樹くんは、気を使って、


「ごめん、こんな遅い時間なのに。

また明日」

「うん、また明日ね。

おやすみなさい」


「あっ、最後に、これだけは言わせて。

俺、本気だから。

今はたぶん、ゆりちゃんの気持ちは雅人に向いてるだろうけど。

同窓会の懇親会でも、雅人とふたりで話してただろ?

あの時から、俺、負けてるなって思ってたけど。

諦めないから。

それだけ、おやすみ」

「・・・うん、おやすみ」


電話を切ったあと。

自分の今の状況を、客観的に見たら。

いわゆる、モテ期ってやつなのかも、って、ちょっとうぬぼれた。
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