10年後も、キミと。
芳樹くんを偶然みかけてから、一週間。

今日は、楽しみだったクリスマスイブ。

今日まで、芳樹くんは特に変わった様子もなくて。

普通に電話して、LINEして。

私だけがギクシャクしてた。


クリスマスのケーキ屋は、戦場だ。

間違えないように、かつ素早く応対しないといけない。

午後はほとんど休憩が取れなかった。


21時、明日の準備を終えてお店を出た。

デパ地下のバックヤードで、芳樹くんに電話した。

「お疲れさま。
俺、近くにいるから、地下鉄の出口で待ってて」

「うん、わかった」


いつもと変わらない、芳樹くんの声。



着替えて地上に出る。

12月の風は冷たい。

紙袋を持って、すぐ近くの地下鉄出口へ向かおうとしたら、

「ゆりちゃん!」

と、後ろから呼ぶ声がした。

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