嘘つきなポーカー 2
「そう!これ、桐島に作ってきたの!」
由佳は自分でも何を言っているのか分からなかった。
この危機的な状況を回避するために、とっさに起こした行動だった。
「え?俺!?」
和也は驚いたように言う。
「そう!食べて!じゃ!」
「え…ちょっと笠原待っ…」
由佳は和也の言葉も聞かず、慌てて靴を履き、その場から逃げるようにして去った。
去り際に、由佳は薫と一瞬目が合ってしまった。
だが慌てて目をそらすと、その場を後にした。
「ごめんだけど、俺これ受け取れねぇわ。」
薫は目の前でチョコを差し出す女の子に、そう言った。
「え…」
「俺は好きな奴からしか受け取らないことにしてる。ごめんな。」
走り去って行く由佳の後ろ姿を見つめながら、薫は呟いた。