夜を駆ける

 足元の黒い獣をなでながら、わたしを見る目は肉体を通り抜けて魂まで見ているようだった。

『「ワタシはスポテット・フォーンこの獣の名前はローリング・サンダー」』

 獣の言葉が頭に響いてきたように、この人の言葉も頭に響いてくる。そしてその言葉というのが、あたし達とは違うらしく、唇からこぼれる言葉を理解できない。

 一人なのに二人いるような不思議な感じがした。頭に響く言葉は名前の意味も教えてくれた。スポテット・フォーンは斑の雌鹿、ローリング・サンダーは雷鳴。



「よろしくお願いしますスポテット・フォーン、ローリング・サンダー」

 黒い獣はちらとこちらを見て、また気持ち良さそうに目を閉じた。


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