夜を駆ける

 夢見心地でごろりと横たわると、ぎしりと寝台が軋む。ずいぶん派手な音をたてるのねぇ。

 寝台が壊れちゃいそう。

 目を閉じた感覚は、耳と鼻が鋭くなるので、遠く庭の枝に遊ぶ鳥のさえずりさえはっきりと聞き分けられる。

 鳥の奥さんの井戸端会議が始まって、今日の餌についてあれこれとさえずっている。

あの家はケチだからだめ、今度はこの家にしなさいよだとか、どこの畑に芋虫がいるだのと話している。

 鳥の世界も現実的ね。



 くんくんと鼻をならすと、家の竃の湯気の匂いがした。父さんが、先に起きて朝餉の支度を始めたのかもしれない。



 起きなくちゃだなぁ。



 寝返りを打ち、思いきって目を開けると、獣の前足が目に入ったので、慌てて身を翻す。

 ところが、獣の足はついてくる。自分の手を見ようとしたら、目の前で動いているのは獣の前足だった。

 試しに握ってみたら、にゅっと鋭い爪がでた。




あたし、獣になっちゃってる。

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