夜を駆ける
うだうだと考えていても、一向に解決なんてしない。
相談出来る相手は父しかなく不在だ。もっとも父にしても、あたしが虎になったと気づかない場合も有り得る。
こればかりは会わないと解らない。
スポテッドフォーンの言葉が解ったように、あたしの言葉も解ってほしい。
虎の体では家事など何も出来ず、ただしっぽが自分の意思で動くのを眺めていた。
ゆらり ゆらり。
かなり意識がぼんやりしていたんだと思う。
戸の開け閉めの音がしたのに、警戒心をおこさずに、あたしはまだ床に寝そべっていた。
軽い足音がしてソウニャが顔を出すまで…あたしはまだ自分の状況を飲み込めなくて、ぽかんと見つめあった。
先に動いたのはソウニャのほうで、悲鳴をあげながら後ずさる。
「きゃああああっ」
ソウニャが抱えていた笊が落ち、茸が飛び散るのが、酷くゆっくりに感じた。
茸が床に落ち、弾けるまでの間にあたしは身を翻して裏口から外に跳び出した。