夜を駆ける

黒い獣の言いようにかちんとくる。


『なによ。何も教えてくれないくせにお説教に来たの』


黒い獣は仕方ないというように、そばに腰を下ろす。

『斑がお前を心配してる。見て来てってのは、そういう事だろうが。実際来てみたら、教えてもいないのに、大地から力を分けて貰ってやがる。驚いたよ、お前には』


『褒めてんのか、けなしてんのか解んない』

ぴしりとしっぽが大地を打つ。黒い獣は顔色ひとつ変えずに悠然と座っている。

『ま、どっちでもいいさ。良く頑張ったって褒めて欲しいのか、無理するんじゃないって叱って欲しいのか知らんがね』

喉の奥でくくっと笑い声がおきる。前脚を組んで、見上げるような姿勢から見られると馬鹿にされているようでいい気はしない。

『あたしがそんなに構って欲しい訳ないじゃない。こんな姿になって苦労しているっていうのに。そういえば、なんで解ったのよ あたしが虎になってるって』

虎の顔で睨めば、さぞかし迫力があるだろう。それなのにローリングサンダーときたら、ひげをそよがせただけで うんもすんもない。

『起きたら虎で、困ってるんだから』


丸い目が落ちそうなほど見開かれた。

『お前、虎が好きだって自分で言っただろうが』


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