夜を駆ける
「何てことしてくれたのよ」


 逃げられたことに向かっ腹をたてたあたしが、ハンを振り返ると何事もなかったかのように穏やかに微笑んでいた。


「どうした。何かあったのか」

「ハンのせいでスンホンに逃げられたじゃない。あの子、何か隠してる」


 こんな所で何を探してるのか。土を掘り起こしているということは、きのこだろうか。


「ハンもスンホンのことを気をつけて見ていて」


「シュウメイの気のせいじゃない」

 何にも考えていないような、へらりとした笑いが憎らしい。


「何かあってからじゃ困るの。引率してるあたし達がきちんと見てなくちゃ」


 ふうっと大きく息を吐いて、ハンが答えをよこす。


「気をつけておくよ」

「山で何かあったりしたら大変」


 
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