王様とうさぎさん
花嫁の泊まる部屋
 


「最悪です、この家は」
と言うと、允は、はあ? という顔をする。

「……俺がツタンカーメンみたいだと言ったからか?」

 朝、カウンターの前で莉王は允が淹れてくれた珈琲を手に、ぼうっとしていた。

 夕べ、よく眠れなかったのだ。

「いや、その話じゃありません」

 起き抜け、開口一番に允は言った。

『ツタンカーメンみたいだ』

 またこの男、早朝から何を言い出したのかと思ったが。

 カウンターの隅に置いたコンタクトの皿のことのようだった。

 茶色い天板の上に、細長い皿が、そういえば、目のように置いてある。

 右目、左目、とか考えながら置いたからだろう。

 しかし、何故、いきなりツタンカーメン。

 この人の感性は相変わらず普通でない、と思いながら、ちょうどいい熱さの珈琲を飲む。

 珈琲はそんなに好きな方ではないが、これはまろやかで飲みやすかった。

「出たんですよ、夕べ」

「寝室にか?

 この家には何も居ないと言ったじゃないか」

「居なかったんですよ、私があそこで、一人が寝る前は」
と莉王は渋面を作る。
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