王様とうさぎさん
「清香が最後に、僕じゃなくて、允に相談したことが」

「それは……忍さんとも付き合ってたのなら、忍さんに、その高崎さんのことで相談はできませんよね」

「そうなんだろうけど。

 允がああいう容姿じゃなかったら、話しかけてもいない気がするんだよね、清香」

 清香さんが聞いてたら、怒りそうだな、と周囲を見回してみたのだが、とりあえず、居ないようだった。

 そして気づく。

 あの戸口に居る女の霊が薄くなっていることに。

 清香のことが忍の心に影を落としていたとするのなら。

 その気持ちに少し整理がついたからだろうかと思う。

「清香は允に相談し、僕は清香に頼られなかった。

 それがずっと引っかかってて。

 それで、この店作ったんだ」

「え?」

「此処でお酒呑んで話すことで、清香みたいな人が少しでも気持ちが楽になってくれたらなって」

 そうだったのか、と思っていると、忍はグラスを差し出してくる。

「はい、パインジュース。

 ……も入ってるカクテル」

 そう言って笑う。
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