王様とうさぎさん
帰り道、車まで歩く道々、允に言った。
「清香さんは、霊障相談で来たんですよね」
「ああ。
でも、俺には彼女にまとわりついているという霊が最後まで見えなかった」
「忍さんは、清香さんが貴方に相談するために、そんな嘘をついたと思ってるみたいなんですけど。
私は違うと思います。
本当に霊は居たんですよ、きっと。
たぶん……赤ん坊の霊です」
先程からの話の流れで、清香が気に病んで、相談しそうなものというと、それしか思いつかない。
「その水子の霊が、実際に居たのか、彼女の後悔の念が産み出したものなのかわかりませんけど。
彼女自身が今は霊になってしまっているので」
「それ、高崎の子か?」
「……忍さんの子、という想定もできなくもないですが。
それなら、今、忍さんに憑いてそうな気もするんですけどね」
忍の店にある陰の気に惹かれて、その霊が来ることもなかったし、と思った。
「子どもには誰が父親かわかるのか」
「そうみたいですよ。
允さんも気をつけてくださいね」
俺がなにを気をつける必要がある、と允は言う。