王様とうさぎさん
 それに、あの妙なうさぎが結局、倉庫までついてきて、抱えてくれたから。

『王様、俺と結婚してくれ』

 実際にはそうではなかった気がするのだが、勝ち誇ったように笑い、自分を見下ろす允の幻が見えた。

 誰が王様だっ。

 子どもの頃から、そう呼んでからかう輩(やから)は居たが、男だろうと、ギタギタにしてやっていたのだが。

 あのうさぎには出来ない。

 なんだか怖くて……。

 あの妙に迫力のある坊主に逆らうと祟られそうな気がした。

「そうだ。
 この日曜なんだけどさ。

 コンパ行く?」
と潮が訊いてくる。

「なんで土曜じゃないのよ」

「向こうの会社が日月休みだから」

「美容師さん?」

「今、会社って言わなかったっけ〜?」

 しょうもない話をふたりでコソコソしていて、書類を手にやってきた他所の部長に睨まれた。

 慌てて、席に戻る。
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