キミがこの手を取ってくれるなら
「なんなのよぅ、もぉーっ!」
居酒屋で、私はビール片手に絶叫していた。
いつもなら、職場でたまったストレスは、北原さんを誘って飲んで話をすると、次の日には大抵スッキリとして気持ちを切り換えることができていたけど、今の北原家には後輩よりも大切な大切な愛娘のひまりちゃんがいる。さすがに飲みに行きましょう!とは言えない。
ストレス発散人を失った私だけど、告白のストレスは仕事よりも数倍耐え難くて、今日は紫ちゃんを誘って近所の居酒屋に飲みに来ていた。
「しかし、その後輩くん、ガッツあるわねー。」
焼酎のロック片手に紫ちゃんが愉快そうに笑っている。私はお酒は弱くないけど、飲むとすぐ呂律が回らなくなってしまう。彼女はざるだった。
「わらいごとじゃないよぅ」
「顔はどうなの?悪くなかったら試しに付き合ってみてもいいのに。若い男、いいじゃない?」
「ぱす!たいぷじゃないれす!」
「じゃあ、奈緒子ちゃんのタイプってどんなのよ。」
「……そうちゃん。」
「呆れた。まだそんなこと言ってるの?」
紫ちゃんは、両手を持ち上げて『お手上げ』のポーズをした。呆れられようが、何だろうが、3歳で一目惚れをした奏ちゃんが、ずーっと私のタイプで、基準だ。もはや、刷り込みのようなものかもしれない。