キミがこの手を取ってくれるなら

「奈子!」

「は、はいっっ!」

「今度こんなことや、何かあったら、いつでもすぐ電話よこせよ!いいな?俺を頼れ、って言っただろうが!」

頼って欲しい、とはとても思えないような命令口調だったけど、『頼れ』と言ってくれたことはちょっと嬉しかった。

ほんとは…今日だって飲みに行こうと思った時、一瞬じゅんたを誘おうかと思った。けど沖田くんとのことを、じゅんたにどう話していいか分からなかったんだよね…。


「今まで通り、って感じにはいかないだろうけどさ。奈子とはまだ『なんでも話せる仲』でいたいんだよ。」


きっと、私がじゅんたの想いをどう受け入れていいのか分かんなくて、不自然な態度で接してしまっているのもお見通しなんだろう。


「わ、わかった。…あのっ…たすけてくれてありがと…です。」

それだけ辛うじて言うと「おう。分かればいいんだよ。」と急に優しい口調になって、いつものようにポンポンと頭を撫でてくれた。


魔王はお帰りになってくれたらしい…


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