キミがこの手を取ってくれるなら
沖田くんは、なぜか私と北原さんが付き合っていたと思い込んでいる。抱き抱えられてるとこを見られたりしたから、いろいろと誤解されたのかもしれないんだけど……
だって、最初に告白されたセリフが「姫さん!不倫はダメです。北原さんにはもうお子さんもいるんですから、姫さんが傷つくだけです。付き合うなら俺にしときませんか?」だったもん。
失礼にも程がある。
「だから、北原さんとは何にもないって言ってるでしょ!」
思わず、大声を出してしまっていた。いちいち反応するから、からかわれちゃうのかな…
「それよりも姫ちゃん。さらっと流した『彼氏』のほうが、私は気になってるんだけど。」と嶺岸さんが食いついてきた。
…うまく流したと思ったのに。
「昨日、姫さんのこと居酒屋で口説いてたら、突然彼氏が現れて持ってかれたんです。ってかあの人彼氏なんですか?」
「で、どうなの?姫ちゃん?」
ここは彼氏って言っておくべきだろうか?
でも、沖田くんが面倒だから『彼氏』と言ってしまうのはじゅんたに悪いような気がする…
「ひ、秘密です…」
とりあえず、こう言っておこう。
2人が「えー、ずるいっすよ。」とか「教えてよー。」とか言ってる横で北原さんがにやにやしている。
誰が来たかばれてる…
「さ、雑談は終わりだ。取材、取材。」
北原さんの一声で、私たちは取材の用意に入った。