キミがこの手を取ってくれるなら

「沖田くん、こっち。」

嶺岸さんがベッドのほうを撮影しはじめたので、撮影の邪魔にならないよう私は沖田くんを引っ張ってバスルームのほうに移動した。

撮影用でクリスマス仕様になっている室内の特徴やこの時期ならではの特典なんかをホテルの人に話を聞きながら大まかにまとめていくのが、ここでの私達の仕事だ。

記事にしてしまうと数行だけど、まとめる為には細かい取材がかかせない。

私はこの取材、という手順が好きだった。

しかし、この男はそうではないらしく…

「姫さん、こういうのってホテルの人にアピールポイント聞いてささっとまとめるだけじゃダメなんですかね?」

「…ホテルの人だったらポイントまとめるのは上手かもしれないけど、今取材してるのが無口なラーメン屋さんとかだったら?人任せにしないの。そんなやり方してたら、記事なんてまとめられないわよ。」

ばっさり切り捨ててやる。


最近の沖田くんは私を『口説いてる』からか、私に対しての距離も近いし、何よりも女だからなめられているような気がする。


仕事の場に来てまで、そんな態度だから正直腹が立っていた。
< 111 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop