キミがこの手を取ってくれるなら
奏ちゃんと同じ高校に入っていたじゅんたから彼女のことを聞かされた私は、
「奏ちゃんが、私以外のものになるなんて、許せなーーい!」
と一人で怒りまくった。次の日学校をさぼり、勢いのままに渋るじゅんたを案内役にして高校まで行き、噂の彼女を見に行った。
奏ちゃんと同じクラスだという彼女は、ふわっとカールした栗色の髪、くりっとした二重の大きな目。ふっくらとした唇が印象的なとても可愛らしい女の子だった。彼女がにこっと微笑むと、周りは花が咲いたように明るくなって見えた。
スタイルも良く、奏ちゃんと並ぶ姿はまさに王子とお姫様のようにお似合いで……
最初の勢いをすっかりと無くした私は、そのまま目に涙を浮かべながら、すごすごと元来た道を引き返した。
「だからやめとけって言ったのに」というじゅんたの言葉を背中に受けながら…
どうにか家に帰りつき、親には具合が悪くて早退したと嘘をついて、そのまま部屋に閉じこもった。
テーブルの上の鏡に映った自分をまじまじと見た。真っ直ぐで重い黒髪で、二重まぶただけど、細い目の私。薄い唇。こんな情けない口では、花など咲かせられる訳もない。おまけにチビで、痩せっぽっち。
彼女に勝てる点などひとつも見つけられなかった。
好きという気持ちだけで突っ走ってきた私は、生まれてはじめて自分が奏ちゃんの好みのタイプではなく、おまけに残念な容姿だったことに気がついてしまったのだった。
私は、お姫様じゃなかった。物語の主役ではなかったのだ。