キミがこの手を取ってくれるなら
しばらく黙っていたじゅんただったけど、思いきったように口を開いた。
「なぁ奈子、俺は?俺のことは怖いと思ったことはあるのか?」
小さい頃は手下のようにされて、魔王怖い!と思っていたことはあるけど、大人になって本気でじゅんたを怖いと思ったことなんて一度もなかった。
私は無言で首を横に振った。
「よかった。」
ほっとした表情でじゅんたは私の頭を撫でた。
いつもはこうしてポンポンと頭を撫でてもらうだけで心が落ち着いてくるけど、今日はなんだか不安な気持ちが押し上がってきて、物足りなかった。
…もっと近づきたい。
そんな気持ちでそっとじゅんたの膝の上に手を置いた。
びくっ、とじゅんたの肩が跳ねる。
「奈子、ごめん。」
…嫌だったのかな?不安に思って見上げると、
「そうじゃなくて…俺も男だから…奈子が近くにいて…しかも自分の部屋だし…だから、いろいろと抑えられなくなるんだって…」奈子の話を聞いたばっかりなのに、最低だよなと返された。
意味を理解した私は、火照ったように顔が真っ赤になっていくのが分かったけど、膝に置いた手は離したくなくて、そのまま触れていた。
じゅんたはちょっと考えこむような表情になってから、「奈子のこと、怖がらせたくないって思うんだけどな…でもこんな近くにいたら、俺だって奈子に触れたいって思うんだよ。もっともっと近づきたいって…」と呟くように言い…
そして、「…なぁ、抱きしめてもいいか?」
と聞いてきた。
抱きしめるだけ。何もしないから。…だめかな?と私の気持ちを確かめるように気づかいながら。